「子どもの成長期にしっかりケアしておかないと、大人になってからも体の弱さを引きずってしまう」
これは、私自身を含め、私が現場で多くの患者さんを見てきた中で実感していることです。
幼少期の体の不調は、大人になっても影響する?
例えば、幼少期に便秘がちだったお子さんは大人になっても便秘が続いていたり、腹痛が頻繁だった子は慢性的な胃腸トラブルに悩まされ続けるケースがあります。
もちろん、「子どもの頃はしょっちゅう熱を出していたけど、大人になったら風邪もひかなくなった」という例もあります。しかし、特に胃腸系の不調を引きずったまま成長すると、以下のような影響が出ることもあります。
- 会社を休みがちな社会人になってしまう
- 休日は寝て過ごすほどの体力しかない
- 慢性的なだるさや集中力の欠如
- 太れない
- 気分が安定しない
このような状態になる前に、成長期にしっかりとした栄養ケアや体質改善を行っておくことが大切です。
成長期の子どもは、3ヶ月で体質が変わることも
子どもは細胞分裂のスピードが早く、体の変化も大人よりずっと早いです。中には、たった3ヶ月の栄養サポートで別人のように元気になる子もいます。
成長期の栄養障害が将来の病気リスクにつながる?
最近、国際糖尿病連合(IDF)から「5型糖尿病」が発表されました(※1)。これは、長期的な栄養不足による膵臓の発達障害によって起こる新しいタイプの糖尿病です。発展途上国に多いとされていますが、現代の日本でも「偏った栄養」や「吸収不良」によって、膵臓の発達のリスクがあるということを暗に示唆しているものと捉えることができます。(日本では現在「5型糖尿病」の診断はできません。)血液検査で一見問題がなくても、「基準値の範囲内だが高め(低め)」などのサインは見逃せないということです。
これは、50年前と比べ野菜の栄養価の低下していること(※2)、冷凍食品やレトルト食品の普及という背景があることも裏付けとなっています。
参考(※1):IDF launches new type 5 diabetes working group
参考(※2):文部科学省 日本食品標準成分表2015
子どもの成長期の栄養障害、原因は“食生活の乱れ”だけではない
「しっかり食べさせているのに、なぜか元気がない…」
そんなときは、以下のような背景も疑ってみてください。
- 腹痛が続き、食べることに抵抗感がある
- 胃腸が弱く、栄養をうまく吸収できていない
- 起立性調節障害などで、朝ご飯が食べられない
私自身、小児科門前の薬局に勤務していた経験があり、便秘の子どもが年々増えている実感があります。栄養の吸収を担う臓器である腸の細胞の働きが弱い子が多く、これは他の臓器や成長全体にも大きな影響を与えかねません。
ちなみに、私自身も幼少期に高熱で食事が摂れなかった時期があり、その時に生えてきた大人の歯が1本ボロボロになった経験があります。これも「子どもの成長期の栄養不足がいかに深刻か」を身をもって実感した出来事です。
サプリメントに頼る前に知っておきたいこと
「じゃあ、サプリメントで栄養を補えばいいのでは?」と思うかもしれませんが、やみくもに摂取することは逆効果になることもあります。
サプリメントの注意点
- 脂溶性ビタミン(VD,VA,VK,VE)は体に蓄積しやすく、過剰摂取で副作用が出る可能性があること※
- ミネラルは比率が重要であること
- タンパク質を構成するアミノ酸は偏った成分だけを補っても意味がないこと
※ビタミンDの過剰摂取では「食欲不振」になることもあり栄養補給に逆効果な事象が起こります。
3つ目のアミノ酸に関しては、「アミノ酸スコア」という指標があります。
これは、私たちの体を作るたんぱく質のもととなる20種類のアミノ酸のうち、体内で合成できない「必須アミノ酸」9種類がどれだけバランスよく含まれているかを示すものです。必須アミノ酸は、どれか一つでも不足すると、他のアミノ酸の働きも十分に発揮されなくなってしまいます。そのため、アミノ酸スコアが100に近い食品や健康食品を選ぶことが大切です。特に、卵・牛乳・肉類はアミノ酸スコアが高く、理想的なたんぱく源として知られています。
また、天然か合成かの違いにも注意してください。例えば、ビタミンEに関しては、合成のビタミンEは「dl-α-トコフェロール」、より強力な天然型は「d-α-トコフェロール」と記載されています。他にも、γ‐トコフェロール、トコトリエノール、混合トコフェロールなどの記載があるビタミンEサプリメントも存在しますが、上記「α‐トコフェロール」よりも優れているかどうかについてはエビデンスは出ていません。
サプリメントに関してはぜひ専門家にご相談ください。
忙しいご家庭でもできること
共働きのご家庭や、栄養を考えた食事を作る時間がないご家庭も多いと思います。
「レトルトばかりで申し訳ない…」とママが自分を責めてしまうことがあるかもしれませんが、そんな必要は全くありません。それが原因でママ自身がメンタルや体調を崩してしまっては本末転倒です。
栄養のプロに相談しながら、賢く無理なく家庭に合った方法を見つけることが大切です。”賢く”がミソであります。
子どもの成長に自然由来の栄養補助や漢方という選択肢も
Fuwari薬局では基本的には自然由来の栄養補給や、体質に合わせた漢方を上手に取り入れることで、親子ともに無理なく健康を目指していきます。漢方を用いるケースというのは、子どもの成長に大きく関わる起立性調節障害や胃腸の不調などで、栄養療法だけでは難しいことが多いためです。
当薬局では、お子さんにも飲みやすい形での漢方の提案も行っております。飲み方や続け方も丁寧にお伝えしますので、安心してご相談ください。
【まとめ】子どもの成長のために
成長期は、一生の健康の土台をつくるとても大切な時期です。
「なんとなく元気がない」「食欲がない」「お腹の調子が悪い」――
そんなちょっとしたサインを見逃さず、できることから始めていきましょう。
無理なく、安心して、前向きに。
ご家庭の状況やお子さんの体質に合わせたサポートを一緒に考えていければと思います。